金剛不壊 5





紅孩児との約束の朝。

三蔵一行4人は ジープに乗り 宿を出た。

紅孩児からの手紙には 何も書いてなかったが、

ただで を返すとは思っていなかったので、

当然 戦わなければならないと 覚悟をしていた。

が乗っていないジープが これほど火が消えたように 

寂しく広く感じるとは4人は思っていなかった。

がいないと 隣がスースーして なんか嫌だ。」

悟空は 悟浄との隙間を 横目で見ながらそう言った。

「俺だって 嫌だぜ、すぐ隣が お猿ちゃんっていうのわよ。」

くわえ煙草で 悟浄も同調する。

「僕だって バックミラーの中に がいないと寂しいです。」

八戒は 冷たい笑顔で そう言った。

「フン。」三蔵も 嫌なのだろうが、言葉にはしなかった。





「じゃあ 皆さんの意見が一致した所で、お姫様をお迎えに行きましょうか。」

アクセルを踏み込んで、八戒が声だけ陽気そうに言う。

「俺 絶対 には 帰ってきてもらう。

どんなに腹いっぱいに食べても なんかここん所が スースーするんだ。」

悟空はそう言うと 自分の胸を指差した。

「ガキのくせに わかったような事言うね〜。だが その意見には 賛成だ。」

「そうですね、僕も賛成です。

がいないおかげで 誰かさんの機嫌も3割り増しで 悪いようですしね。」

何も言わずに 俯いている三蔵を横目で見ながら、八戒は ジープを運転する。




街を出て 暫く行くと森の中に開けた場所があった。

そこに 人影が3つ見えて 八戒はジープを止めた。

3体の人影は 紅孩児と八百鼡 そして のものだった。

悟空が ヤル気で前に出ようとするのを 「悟空 待て。」と 三蔵が止めた。

三蔵も 左手を懐の愛銃に手を掛けていて いつでも 撃てるようにしている。

しかし 紅孩児と八百鼡から 殺気が感じられない。

はと見ると 2人となにやら話し、頭を下げている。

4人が見守る中を を1人残して、紅孩児たちは 飛竜に乗って帰っていった。

それを見送って は笑顔で4人の方に向き直ると ゆっくりと歩いてくる。

三蔵に止められていた 悟空がに向かって走り出す。

悟浄も八戒も その後ろから歩いて近づいていった。





 、大丈夫か? 紅孩児たちに何かされなかったか?」

悟空は 走りながら に話しかける。

「えぇ 大丈夫ですよ。何もされませんでしたから 安心してください。

悟空 そんなに走らなくても 私は戻ってきたんですから・・・。」

!!」

悟空は それほど背丈の変わらないに飛びつき 抱きしめた。

「まあ!悟空ったら 小さい子供みたいですよ。

心配かけましたね 沢山捜してくれたのでしょう。ごめんなさいね、悟空。」

悟空の身体を受け止めて その背を 母のように撫でてやる

悟空の後ろから来た 悟浄と八戒にも笑顔で 挨拶する。

「悟浄、八戒、只今戻りました。」

「おう お帰り、。」

「お帰りなさい、。身体の具合はもういいんですか?」

「えぇ 八百鼡さんに診て頂いて だいぶ良くなりました。とりあえず 飛竜に乗れるまで

回復したので 送ってくださったんです。」

「そうですか それじゃ次の街で もう少し 休んだ方がいいですね。」




それまで 抱きついていた悟空の背をポンポンと 叩いて自分の身から離すと、

「ごめんね みんな。少しでいいから 三蔵と2人にしてもらえるかしら。

この少し先に 川があったから そこで待っていてくれる?」

は あのまま 動かずに自分を見ている三蔵の所へと 向かった。

3人は の言葉に黙って頷くと、ジープに乗って先に出た。

「三蔵 只今戻りました。」

「あぁ。」

「本物かどうか お疑いですか?」

「いや 疑ってはいない。本物かどうか位 見分けが付かなくて どうする。」

「では 何故 銃に手を掛けたままなのです?」

「ちっ、知っていたのか?」

「はい 悟空の背後から撃たれるかと思いました。

何か 私がだと言う証が必要かと思い 2人きりにしてもらったのですが、

どうすれば 信じていただけるでしょうね。何か2人しか解らない事を何か言いましょうか?」

2人は 見つめあったまま 立っていた。

「フン いくぞ。」

三蔵は そう言うと ジープの走り去った方へ 歩き出した。





三蔵の2〜3歩後ろを 付いていく形で は歩いていた。

空き地から森に入ると 河のせせらぎが聞こえてくる。

「本当に すぐに川があるんだな。」

「えぇ 飛竜から見えましたから、八戒たちはそこで待っていてくれるでしょう。」

不意に立ち止まり振り返った三蔵は を抱きしめた。

「何かされなかったか?」

「えぇ 何もされませんでした。むしろ 看病していただいたくらいです。

三蔵たちが李厘さんを 何もせずに帰して差し上げたことへのお礼だそうです。

もし 逆だったら・・・・帰れなかったでしょう。」

「そうか。身体は もういいのか?」

「はい とりあえず 飛竜に乗れるまでは回復しています。それで 帰して頂けたのです。」

「次の街で もう少し休むといい。」

「ありがとうございます。先ほど 八戒にも言われました。」

「ちっ。」

「三蔵。」

「なんだ。」  

「ただいま。」

の帰る場所は ここだぞ。」

「はい。」

「魂なんかで帰ることは 俺がゆるさねぇ。生きて帰って来い。」

「はい。」

「いくぞ 。」






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